幻想庭園 新月図書館

此処は本来在り得ない場所 空想の箱庭 思索の庭園 世界の外から世界を見つめる場所

物語の「終わり」を見届けてきたという話

物語というものには必ず終わりがあります。
しかし、実のところ、終わりまでたどり着ける物語というものは限られているようにも思うのです。

というわけで久しぶりにこのブログを書く筆を執った事件。

あなたは「少女病」という物語をご存じでしょうか?

まぁ、何の話かというと音楽サークルさんのことです。
(メジャーの場でも作品の発表をしています。)
俗に言う、「物語音楽」というジャンルになるでしょうか。
音楽のジャンルとしては公式で「シンフォニックロックを中心とした」と謳っています。
さて、このサークルさん、2016年で一度新作の発表が止まってしまいます。
恐らく誰もが自然消滅なのではないかとと思ったことでしょう。
ぶっちゃけ俺もそう思っていました。

しかし、2021年、突如大きな企画が動き出しました。
なんと「少女病」、ラストアルバムを制作するためのクラウドファンディングをすると。
正直、驚きしかありませんでした。
これは参加しなければ絶対に後悔をしてしまう。
故に、すぐに支援を決めました。

(尚、他の支援者の方のツイートでグッズ関連の現物を見て、もう少し頑張ってアクリルグッズが含まれているプランにしたかったなという後悔だけは生まれました)

そして生まれた最後の物語「真典セクサリス」。
これが本当にすごかったのです。

更に、ラストアルバムに付随してクラファン支援者のみのラストライブが配信で行われました。
これも本当にすごかったです。

現在は件のラストライブが終わって既に2日。
それでも未だに余韻が残っているので、この記事でラストアルバム、ラストライブ双方についての感想を綴りたいと思います。

 

 

 

・「真典セクサリス」感想

というわけで、早速ですが、ここからラストアルバムたる「真典セクサリス」の感想を1曲ずつ簡単に書いていきます。
ちなみにここはネタバレしまくりますので、ご注意ください!!!
そして、考察もしていますが、独自解釈です。
もっとガチで考察してる人からすると「いや、それは違うよ」というのもあるかもなので許してほしい。

1 existenxe
恐らくこのCDのオープニングとも言える曲。
CD発売前にショートMVにて発表されていた曲でもありました。
MVを無限リピした人は少なくないでしょう。

荘厳な中に疾走感のあるメロディ。うん。いつもの1曲目だ。
そして「これが!!!最後なんです!!!」と滅茶苦茶主張してくる語り。
背筋が伸びてしまうな。

「いくよ、フィナーレへ」

最高。
だけれど、ここまでを見てきた身としては切なさも感じるフレーズです。

ところで、MVの「歯向かって 抱き寄せて 切り裂いて 口づけて」の所が滅茶苦茶好きなんですよね……


2 不可逆性クロックワイ
2曲目~5曲目は五魔女のキャラソンと巷で言われていますね。
各魔女の持つ「願い」を示す曲でもあります。
最終盤に向けて、それぞれの立ち位置を復習できて良いと思います。
蒼白の魔女シスフェリアの望みは「巻き戻す」こと。
それはそう。だってそもそも魔女に選ばれたことを一番疎んでいるわけだし。

ただ、思ってしまうのは。
結論から言うとそうはならなかったけれど、「巻き戻し」が叶ったところでまた悲劇は繰り返されたんだろうなぁと。
だって、この世界の「神」、大概禄でもないじゃない……


3 有形悲劇を与えたまえ
本CDの中での五人の魔女のキャラソンの中では一番好きかもしれません。

「人の本質は善か悪か?そんなことはどうでもいい。」
「元より唯一無二の正解なんて存在しないのだから、思考するだけ無駄、そうでしょう?」

これ本当に好き。

というか、今にして思うとアイリーンの語りがゆかなさんなの、個人的に大問題なんだよな……
自分は魔女とはヴィランであるべきものだと考えていて、そういう意味では理想型だとすら思っています。
まぁ、「魔女の概念として」っていうだけで、残響レギオンでやってたことについては普通にドン引きしているんですが。

深紅の魔女アイリーンの願いは「混沌」。最も"魔女"らしいと思っています。


4 sacred answer
メリクルベルってコレクター気質あるよなぁと思ってるんですよ。

真白の魔女メリクルベルの願いは「永遠」。
なんというか、本当にこの魔女はブレないなぁと思っています。
というか、よく考えたらメリクルベルって名前が直接出てこなくても、その陰がちらつくような曲は多く、五魔女の中で最多登場なんじゃいかなって思ってるんですよね。

これも多くの人が言っていますが、「メリクルベルメリクルベル」と繰り返すフレーズ、ものすごい頭に残りますよね。


5 因果律を灼け少女
リフリディアはクラス:バーサーカー・アヴェンジャーだと思ってるんですよ俺は。

静かなイントロから、語りに入っていくにつれ、段々と激しくなっていく音。
いや、リフリディアだわこれ……

「貴女は誰なの!?」

鳥肌ものです。

ただ、この曲についてはまだ多くは語れないんですよ……
小説版の「天巡メルクマール」を読まないことには把握しきれない要素があるようなので……

これの書籍版、買わなきゃと思っていたらBoothで売り切れてしまっていました…… 
思い立ったが吉日になったんだな……
なので、電子版を購入して読んで早いうちにこの曲についての補完をしたいと思います。

紫翠の魔女リフリディアの願いは「破壊」か。


6 筋書き通りの運命劇詩
一番好きかもしれない。正直、これを好きにならない男の子はいないだろうとすら思う。
なんというか、「ヒーローの概念」というものを再考させられました。

「それが少女が病める世界ならば
世界にだって立ち向かおう
そんな残酷な筋書きなら
俺が変えてやる」

という歌詞。「少女病」において、そんな歌詞を書くの、大事件じゃないですか????
他にも自分は「セクサリス・サーガ」にはじめて触れたタイトルが「慟哭ルクセイン」だったので、

「ならば孤独に消える物語」

というフレーズにも叫びました。
えぇ、叫びましたとも。
いや、かっこよすぎるだろルクセイン。
これが「少女病」でなければ主人公だよ、君。


7 ラストピース
そう、「少女病」でなければ。
ルクセインという男はどうしても大事な時に外しがちなんですよね・・・・・・
だからこそアナスタシア=フランチェスカ

「最期まで見届けていてって、私、言ったじゃない」
「あなたが救ったのは、あなただけ」

という台詞が本当に辛い。

ヒーローっていうのは確かにかっこいいものではあるかもしれないけれど、その分「独善でもある」ということを改めて突き付けられた気持ちです。

そして、遂に五人目の魔女が生まれる曲でもあります。
正にタイトル通り。フィナーレへ到達するための、本当に最後の一かけらとなった曲です。

ところで、「残響レギオン」って、初回盤限定のボーナストラックがあるそうですね????
フランチェスカとセクサリスの関連性を拾いきれていないので、探さなければならないと思っています……


8 魔女と神の輪廻
俺はこの曲をラスボス戦と呼んでいます。
五人の魔女は遂に出揃った。誰が神に選ばれ、願いを遂げることができるのか。
それぞれの色を示すように、音楽も頻繁に移り変わります。
それぞれの魔女に関連した音に。
これをラスボス戦と言わずして、なんと言おうか。
とはいえ、別に物理で殴り合いをしてるわけではなく。(してないよね???)
誰が言ったか、「神」へのアピールチャンスタイム。

ものすごいテンション上がってるメリクルベル様、かわいいな。

この曲で謳われている「未来」という言葉については、一考の必要があるように思います。
詳しくは次の曲の感想で。


9 to you
「セクサリス・サーガ」におけるラストエピソードはこの曲にあたると思っています。
やはり衝撃的なのはこの語り。

「如何に面白い御伽話を描けるか、読み手が、望む刺激を求めて脚色していったのだ。」

「神」の正体ではないかと思っています。
ある種の「集合的無意識」というか。我々であるというか。

「此処が最終章 続きは綴らない
神も魔女も 星と墜ちるのよ お生憎様」

なんとこの御伽噺らしい幕引きの言葉。

「未来」というのはこの「世界」に「幕を引くこと」によって、先に進むということなのではないかと考えています。
ここから先を描かないというのは、ある意味では可能性を広げる行為でもあるように思うのです。
「悲劇」という種火によって世界を繰り返していくことに、この「星の記憶」は疲弊してしまったのかもしれません。


ところで天使語翻訳班の方、まだですか。


ex.ボーナストラック
全てが終わった後のエピローグにあたる部分でしょう。
今までに語られてきた「セクサリス」というのは「星の記憶」であるとされています。

「その全てを犠牲にして、私が生まれた」

ここまでに15年間かけて語られてきた物語の果てに、「セクサリス」は生まれたんじゃないでしょうか。
俗な表現をすると「こうして私が生まれたってわけ」というか。


10 genesis
この物語のカーテンコール。
希望を思わせる明るいメロディ。

そして、後述のライブにおいてこの曲を見届けた事も含めてこの曲は明確に自分にとって「呪い」となりました。
いや、言い換えます。これは「不治の病」です。
というか、治すつもりは一切ありません。

少女病」は、スタッフの名前こそ出ていますが、基本中の人を表に出していません。
そういうスタンスで作品を出してきていたというのはクラファンの説明でもされています。

しかし、この曲は明確に、観測者たる我々に向けたものであるといえるのではないでしょうか。
本当に一番最後に歌われた、観測者に向けてのメッセージ。
この曲で謳われている「あなた」とは誰のことを指しているのか。
きっと多義語で、その意味の中には我々観測者も含まれていると思えてなりません。

「あなたにはもう会えないけど」 「あなたはもういないけれど」

と、曲の中には明確にこちら側に対しての別れを告げるフレーズが含まれています。

「ありがとう、忘れないよ」

本当に最後のフレーズです。
正直、この曲の最後の語りを聴くたびに泣きそうになります。

この記事を書きたかった理由の9割方がこの曲に詰まっています。


以上、全10曲+α。
本当に、綺麗に終わりを見せてくれた作品であると思いました。


・ラストライブを経て。

上記の通り、「genesis」を聴くたびに泣きそうになっていたわけです。
そして、ライブというものは総合的に演出ができる分、音以外の要素でもこの世界を示すことができます。
CDで聴いている以上に、明確に「終わり」ということを突き付けられるのではないかと思い、かなりそわそわしていました。

そして、その予想は正解でした。

ライブについては1曲ずつの感想は省きます。
本当にすごい長い記事になってしまいかねない。

ラストアルバム以外からも好きな曲が多く盛り込まれていました。
本当に楽しかった。
「真典セクサリス」へ繋がる曲として選曲されつつ、それでいてほぼ全てのCDから満遍なく選曲されている。
本当に練られたセットリストだったように思います。
このことを他の界隈で繋がっている人らが聞いたら驚かれるんじゃないかと思いますが、配信ライブ、本当に叫びまくってました。
一人で自宅でいるのをいいことに、恐らくライブでこんなに叫んだの初めてだと思います。

そして、本当に最後の「genesis」が終わり、MitsukiさんとLicoさんによる挨拶が終わり、ライブの終焉となりました。

最後に示された演出はある書庫で開かれている一冊の本。
それが綴じられる演出。
沢城みゆきさんによる最後の語り。

そして最後のフレーズ。

「おやすみなさい」

ここで自分は決壊しました。
正直この場面を思い出しながら、この文章を打っている今も泣きそうになっています。

自分にとって、この物語は本当に大切なものだったんだなと最後に改めて感じました。


・最後に。

自分が一番最初に「セクサリス・サーガ」に数えられる「少女病」のCDを手に取ったのは、「慟哭ルクセイン」。
なんと、びっくり。リリースが2009年だそうです。
この時自分はまだ高校生。
少女病は青春だった」と発言していらっしゃる方を散見しますが、自分もそのクチであるように思います。

さて、タグなどでツイッターを見ていると、「終わったからこそ我々が語り継いでいくべきだ」という意見の方をお見かけします。
同意見です。
「物語」というものは語る者がいる限り、生き続けるものです。

というわけで、「少女病」を知らないフォロワー諸氏へ。
多分うるさいくらい積極的に布教しはじめると思うので、覚悟しておくように。

既にこの物語に触れたことのある皆さんへ。
是非、この物語について語ることができれば幸いです。
どの曲が好きだーとか、どのキャラクターが好きだーとか、是非お話しましょう。

それでは。今宵はこの辺で。


うわ、すごい文字数。